設立の挨拶

設立総会(第1回設立記念大会・2000年度定例総会)において

仁田 義雄 (大阪外国語大学)

会長にご指名いただきました仁田でございます。まず,皆様とこのように,新しい学会の誕生の,その現場に立ち会わせていただいたことに,心から感謝申し上げます。

本,日本語文法学会は,その設立趣意書にもありますように,日本語の文法研究を核に据えながら,他の研究領域の研究者とも協同し,かつ他の言語の研究者との対話を計り,日本語文法研究の発展を目指して行こうとするものです。さらにまた,文法現象そのものを掘り起こし,それを体系的・組織的に分析・記述し,真に日本語の文法研究の進展を計るために,理論的研究と実証的研究の双方を重視し,その両者の間に橋を架けること,さらに多様な研究方法との対話可能性を開くことを目指すものです。

本会設立の契機が,日本語文法談話会にあったとはいえ,決して閉じられた集まりを目指しているのではなく,広範な研究者に結集していただけるものにしていかなければならない,と思っております。一人では出来ないことも,たくさんの人が集まることによって,それを成し遂げる力の生まれてくることが少なくありません。いろいろな方々に,本,日本語文法学会にお集まりいただき,本学会を言語研究の進展に貢献できる学会にしていきたい,と祈念しております。

皆様と共に事業を起こし,仕事や活動を行いうる場・機会を創成してゆき,それらを成し遂げていきたいと思っております。そして,このような活動を通して,濃密な議論を交換し,研究の質を高め,我々が育っていける学会にしたい,と思っております。

今回,国語学会・言語学会・日本語教育学会・英語学会などが,あるにも拘わらず,日本語の文法研究を核に据えた日本語文法学会を設立しましたのは,以上のような理由によるものです。

人の学的営みや学会の誕生なども,歴史的制約・歴史的流れの中にあるものです。学会を誕生させたこと,今後なしていくであろう活動に対して,私達は歴史に対する責任を意識する必要があろうと思います。なしてしまったことが,結果として反動的な営みになるようなことがないように,批判的な眼を持って活動をしていかなければならない,と思っております。

今日選出いただきました,評議員,大会委員,学会誌委員,総務委員ならびに会計監査の方々,そしてなにより会員の皆様方のご協力を得まして,学会が発展していくように,任期いっぱい,力の及ぶ限り務めるつもりでございます。なにとぞ,ご協力のほど心からお願い申し上げます。

日本語文法学会が,5年,10年,15年,20年,30年と続き,所期の目的を果たしてくれることを願っております。

今日,このように,新しい学会の誕生に立ち会わせていただきましたことに,心から感謝申し上げます。ありがとうございました。