学会誌『日本語文法』の「特集」に関するお知らせ(2022年2月26日)

日本語文法学会 学会誌委員会

 『日本語文法』23巻1号(2023年3月刊行)では,21巻1号から始めた公募型の特集の第3回として,一般の研究論文とは別に,テーマに沿った論文を募集します。
 会員各位におかれましては,以下の「テーマ」及び「趣旨」を御理解の上,ふるって御投稿いただきますよう,お願い申し上げます。
 なお,一般の投稿論文とは別枠とするものの,査読は通常通り行います。また,一般の投稿論文も通常通り受け付けます。この特集により,一般の投稿論文の採用数を減らすということはありませんので,御懸念のないように願います。
 投稿期限は,23巻1号の通常の投稿期限と同じ,2022年10月1日です。
 御投稿にあたって,書式等は一般の研究論文と同じですが,「種別」欄は「研究論文」とし,論題の冒頭に「(特集)」を付記してください。ただし,この付記は,投稿時における便宜的な措置であり,掲載時には削除します。
  [例] 「(特集)日本語学習者の行為要求表現について」

『日本語文法』23巻1号 「特集」
テーマ:日本語教育

趣 旨:
 かつて密接なつながりをもっていた日本語文法研究と日本語教育は,双方の進展・成熟にともなって乖離した,また,日本語教育界から文法に向けられる関心は以前に比べ低下したという指摘がしばしばなされます。しかし,文法が言語に内在するルールである以上,文法を抜きにして日本語教育が成り立たないことは言うまでもありません。実際,2000年代以降,日本語教育における必要性から出発した日本語教育のための文法を追究する流れが生まれました。
 その中では,従来の文法シラバスを根本から見直そうとするもの,教える項目や提示のしかたを検討し直すため使用実態を調査するもの,学習者の運用につなげるために形式や表現が使用される文脈や場面に注目するものなど,さまざまな研究がなされてきました。学習者・学習目的の多様化をふまえ,聞く・話す・読む・書くという四技能ごとに,さらには「留学生のアカデミック・ラィティング」や「年少者の授業理解」のように対象をしぼって文法を考えようとする試みもみられます。また,従来の正確な日本語運用を目指す立場のほか,学習者の負担への配慮などから100%の正確さを目指さないという立場や,多文化共生社会では正確さよりも感じのよさがより重要だという考え方など,教育の目指す方向性もより多様になっています。
 このような背景のもと,今回の特集のテーマに「日本語教育」を提案いたします。日本語教育と文法に関わるものであれば,学習者コーパスや日本語教科書を扱うものなど現場に即した研究はもちろん,習得研究,対照研究,談話研究,語用論,文体論などさまざまなアプローチによる研究を歓迎いたします。
 本特集のもとに多様な立場,射程,目的,方法による意欲的な研究が集まることにより,日本語教育のための文法がさらに活発に議論され発展することを願います。そして,教育のための文法の考察が,文法研究全般への刺激となり,新たな観点・知見の獲得につながることを期待しています。

(企画担当委員:高梨信乃,安部朋世)