本発表では,現場指示用法におけるソ系列指示詞のうち,特に人称区分に関わるものに ついて考察した。堤(1998,2002)で提示した,文脈指示を扱うモデルを現場指示用法に援 用するという立場をとり,コ/アは話者の心的領域であるWsでそれが指す対象が映像化 という処理を受けて,主観的なイメージとして登録されるのに対し,ソが指す対象は,も う一つの領域であるWpにおいて変項(x,y..)として登録されており,Wsの要素に比して 客観的であると考えた。このように考えると,聞き手が存在することによって初めて現れ る現場指示用法のソは,聞き手の領域にあると話者が考える要素に対して,話者の優先権 を主張してはならないという語用論的な制約によって出現するものであるということにな る。発表ではこのように考える根拠と,分析の利点を紹介し,文脈指示と現場指示の用法 を一つのモデルで捉える一つの試みを示した。