言語心理学と文法研究の接点――学習可能性――

大津 由紀雄 (慶應義塾大学)

 学習可能性learnabilityとは,おとなの文法は生物学的に与えられた獲得機構と生後子どもが外界から取り込む情報 (経験) から帰納可能なものでなくてはならないという一種のメタ制約を指す。学習可能性の制約は,文法研究において,(個別) 文法を当該言語の話者の脳に内蔵された言語知識とみなす立場をとるのであれば,当然,考慮されるべきものであるが,現状では,文法研究と言語獲得研究の間の有機的関係がまだ十分に機能していないことが多く,あまり顧みられていない。今回の発表では,学習可能性の制約のうち,否定証拠不必要の制約 (言語の獲得には否定証拠は必要ではない) と文埋め込み度数2以内の制約 (子どもが取り込むことができる文情報はせいぜい文埋め込み度数2の範囲内のものに限られる) について検討した。


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Last update: 2003/10/28