形容詞 (文) は,一般に,対象の「属性」 (例: 優しい) や「状態」 (例: 元気だ) を表わすとされる。 しかし,一部の形容詞 (文) は,単なる属性や状態として自然な解釈が成立しないことがある。 例えば,「座布団がうすい」と「座布団がぺちゃんこだ」というふたつの文を比べると,前者は,単なる座布団の性質を述べたものと理解されるが,後者は,もとは厚い座布団が長い間座り続けた結果,「潰れた」=「うすくなった」と解釈される傾向がある。本発表は,このように,形容詞 (文) が何らかの行為や出来事に対する結果の状態 (結果相) として解釈される場合について考察し,そのような文理解の背後に語彙的情報だけでなく,現在の状態を何らかの行為や出来事の「痕跡」として認めるアブダクション (痕跡的認知) という認知的推論が働くことを示した。