自然言語処理における主要な問題は,様々なレベルでの曖昧性の解消であり,また,多様な言語表現に柔軟に対応することのできる頑健さである。自然言語処理のための文法は,これらの要件を満たすことを目指して発展してきたと言える。80年代から90年代にかけて進展した単一化文法の流れ,および,90年代から特に盛んになったコーパスに基づく自然言語処理の両者は,文法現象を語彙情報として取り込む方向での発展,すなわち,文法の語彙化として捉えることができる。我々が行ってきた語彙に関する共起情報を利用した日本語の統計的係り受け解析に関する研究の現状を紹介し,語彙情報を直接利用することによってはじめて係り受け解析の精度向上が可能になったことを示した。また,単一化文法および最近の語彙意味論の代表事例を示し,このような深い語彙記述のための理論と語彙情報を用いた統計的手法の統合を目指した我々の研究の現状について述べた。