本発表では連体詞「ある」を考察の対象とし,「ある」が行う限定のあり方とその談話的機能は修飾する名詞句の指示性,及び名詞句の意味特性と関連があることを主張した。
「ある+名詞句」には特定指示を行う場合と不特定指示を行う場合があり,指示性の違いが「ある」が行う限定のあり方に反映される。特定の場合は聞き手を配慮する,聞き手に注目させるという談話的機能が存在し,不特定の場合は非特定的な要素を含む事態を談話に導入する働きを持つ。不特定の場合,「ある」が「一部の」に置き換えられるものと単なる部分集合を想定するものの二種類がある。また「ある」が行う限定のあり方には,名詞句の意味特性が関与するものもある。この場合の名詞句は通常何らかのマーカーが必要で,量・程度を表す名詞句は「ある」が「一定の」に置き換えられる,時を表す名詞句は過去の事態となる,「ある種」など慣用句的なものがあることを特徴として指摘した。