〈否認〉を表すシテイナイ
―テンス・アスペクトおよび否定の類型と談話的機能の相関性―

尾崎奈津(岡山大学大学院生)

 過去のことを表すシテイナイは一般的にシナカッタに置き換え可能とされるが実際には,「昨日,私に黙って映画に行ったでしょ」「{行ってない/#行かなかった}」のように置き換えると不自然になる例がかなり見られる。本発表ではこのような例に注目し,(1)シテイナイには過去に当該の出来事があったとする相手の主張・認識を事実と異なるものとして否認する働きがあること,(2)シナカッタと〈否認〉のシテイナイはどちらも過去に当該の出来事がなかったことを表すが,後者はさらに相手の主張・認識を事実と異なるとする話し手の主張をも表す表現であり,相手の発話を受けてこれを否認する談話レベルの否定である点で前者と異なることを述べた。また,〈否認〉のシテイナイは,「命題の側面」の否定か「モーダルな側面」の否定かといった否定の類型から見れば「モーダルな側面」の否定を表すものであり,その点でノデハナイ,ワケデハナイに近づいていることを述べた。


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Last update: 2002/03/13