現在の日本語教育の現場では,一人称主体の「と思っている」は「思考の長期継続」というアスペクトによる説明が多い。しかし,思考動詞は人称性やムード性が関わるため典型的なアスペクト対立を持たない。本発表では,日本語学習者の発話に見られた不自然な「と思っている」の使用を考察対象に分析し,以下の結論を得た。(1)日本語母語話者は「表出+と思っている」が多いのに対し,学習者は「判断文+と思っている」という形が多い。(2)判断文の中でも母語話者は「〈疑い(カナ,ノデハナイカ)〉+と思っている」が多いのに対し,学習者は「〈確信 (無標)〉+と思っている」が多い。「確信+と思っている」は,〈強い確信〉となるため,その多用が学習者の発話に不自然さをもたらす。(3)「と思っている」には,話し手の思考内容が他者のそれと異なることを取り立てて主張する用法があり,学習者の用例はその使用が文脈にそぐわないため,不自然に感じられる。